経審(経営事項審査)の評点を戦略的に上げる方法|行政書士が教える実務対策

経営事項審査(経審)の評点を戦略的に上げる方法 横浜

「経審を毎年受けているけど、なかなか点数が上がらない」「他社と比べて評点が低く、入札で不利になっている気がする」——こんなお悩みを持つ建設業経営者は多くいらっしゃいます。実は、経審は受けるタイミングや事前準備によって、同じ会社でも評点に大きな差が出る審査です。この記事では、建設業界に強い行政書士の視点から、経審の評点を戦略的に引き上げるための実務対策を解説します。

目次

「とりあえず受ける」だけでは損をする理由

経営事項審査(経審)の結果は、公共工事の入札参加資格審査における評点(総合評定値P点)に直結します。しかし、多くの会社が「決算が終わったら申請する」という受け身のスタンスで臨んでいます。

問題はここにあります。決算が確定した後では、財務数値を改善する手段がほぼ残っていません。経審の評点は財務内容・社会性・技術力・経営状況など複数の要素で構成されており、それぞれに対策を打てる「タイムリミット」があります。決算の数ヶ月前から準備を始めた会社と、決算後に動き出した会社とでは、同じ規模でも評点に数十点の差がつくことも珍しくありません。

財務面(X2・Y)のコツ

未成工事支出金の整理による利益の適正化

建設業の決算では、期末時点で完成していない工事について「未成工事支出金」として資産計上する処理が行われます。この金額の計上タイミングや金額の適正化が、完成工事高・完成工事原価・利益率に直接影響します。

  • 決算期末にかかっている工事の進捗度・原価の集計を早めに行い、未成工事支出金の金額を正確に把握する
  • 前期から繰り越した工事が当期中に完成している場合、完成工事高への振替が漏れていないか確認する
  • 経費の計上は適切な期間に対応させることで、収益性指標を正確に反映させる

利益率が高く見える・総資本が適切に管理されているほど、財務評点(X2)と経営状況分析(Y)のスコアは改善されます。

役員借入金の資本金化(DES)の検討

中小建設業者では、役員(経営者)が会社に貸し付けているお金(役員借入金)が貸借対照表に計上されているケースが多くあります。この役員借入金は負債として扱われるため、自己資本比率を下げる要因となります。

DES(デット・エクイティ・スワップ)とは、この借入金を資本金に振り替える手法です。負債が減り自己資本が増えることで、自己資本比率が改善し、財務評点のアップにつながります。ただし税務上の影響も伴うため、必ず行政書士に相談の上で検討してください。

📊 行政書士の視点|決算前3ヶ月が勝負

財務評点の改善は、決算日を過ぎると手の打ちようがなくなります。特に自己資本比率・売上高経常利益率・総資本回転率といった指標は、決算前の動き次第で数値が大きく変わります。役員借入金のDESや経費計上の見直しは、決算の3ヶ月前を目安に行政書士へ相談することをお勧めします。「去年より売上が伸びたのに評点が下がった」という事態を防ぐためにも、期中からの連携が重要です。

社会性(W)のコツ

社会性等(W)は、社会保険の加入状況・建設機械の保有・防災協定の締結など、比較的対策しやすい項目が多く、コストパフォーマンスの高い加点領域です。

防災協定や建設機械の保有などコスパの良い加点項目

  • 防災協定の締結:地方自治体や地域団体と防災に関する協定を結ぶことで加点対象となります。地域貢献にもつながるため、積極的に検討する価値があります。
  • 建設機械の保有:ショベルカーやダンプ等の特定建設機械を保有・リースしている場合、台数に応じて加点されます。すでに保有している機械があれば、確実に申告しましょう。
  • ISO認証の取得:ISO9001(品質)やISO14001(環境)の認証取得も加点対象です。認証取得には費用と時間がかかりますが、営業面でのメリットも大きい投資です。
  • 若年技術者・女性技術者の継続雇用:35歳未満の若手技術者や女性技術者を一定数雇用・継続させることで加点が得られます。人材採用の方針と合わせて検討しましょう。

社会保険加入の徹底

健康保険・厚生年金・雇用保険の三保険への加入は、現在では建設業許可の要件にもなっており、経審でも加点・減点に影響します。全従業員・役員の加入状況を今一度確認し、漏れがないようにしましょう。未加入や手続き漏れは減点要因となるだけでなく、許可更新にも支障をきたす可能性があります。

技術力(Z)のコツ

資格取得の推奨と技術者名簿の正確な管理

技術力評点(Z)は、技術職員の数と保有資格のレベルによって決まります。1級施工管理技士や技術士などの上位資格保持者は、2級資格者より大幅に高い点数が配分されます。

  • 資格取得の計画的な推進:2級資格者が1級を取得するだけで、技術力評点が大きく跳ね上がります。受験スケジュールを把握し、会社として資格取得を奨励・支援する体制を整えましょう。
  • 技術者名簿の正確な管理:在籍する技術職員の氏名・保有資格・雇用区分(常勤・非常勤)を常に最新の状態に保ちましょう。申請時に名簿が不正確だと、本来得られるはずの点数を失うことになります。
  • 元請完成工事高の積み上げ:技術力評点には完成工事高(特に元請)も影響します。下請けに偏っている場合は、元請比率の向上を経営戦略として位置づけることも検討してください。

まとめ|決算の数ヶ月前から準備を始めることが最大の戦略

経審の評点アップは、決算後に慌てて対策するものではなく、期中からの継続的な準備と専門家との連携によって実現するものです。以下のポイントを押さえて、次の経審に備えましょう。

  • 財務面は決算前3ヶ月を目安に行政書士へ相談し、未成工事支出金の整理・役員借入金のDES等を検討する
  • 社会性(W)は防災協定・建設機械・社会保険など比較的取り組みやすい加点項目を確実に押さえる
  • 技術力(Z)は1級資格の取得支援と、技術者名簿の正確な管理を日頃から徹底する
  • 経審の申請スケジュールを逆算し、「いつまでに何を準備すべきか」を年間計画に落とし込む

横浜の建設専門行政書士事務所では、経審の申請サポートから評点アップのご相談まで、建設業に特化した専門家が対応いたします。「今の評点で本当に大丈夫か確認したい」「次の決算に向けて何から始めるべきか」など、お気軽にお問い合わせください。

なお、当事務所はグループ内に税理士事務所を有しており、財務面の対策から経審申請まで一括してサポートすることが可能です。決算前の数値改善や役員借入金の整理なども行政書士と税理士が連携して対応いたしますので、評点を上げやすい環境が整っています。

まず押さえたい:P点の計算式と構成要素

経審の評点対策を始める前に、P点がどのように計算されるかを理解しておくことが重要です。総合評定値(P点)の計算式は以下のとおりです。

P = 0.25X1 + 0.15X2 + 0.20Y + 0.25Z + 0.15W

  • X1(完成工事高):過去2年または3年の平均完成工事高をもとに算出。業種ごとに計算されます。
  • X2(自己資本額・平均利益額):財務の安定性・規模を評価する指標です。
  • Y(経営状況):登録経営状況分析機関が8つの財務指標をもとに分析・評価します。
  • Z(技術力):在籍する技術職員の数と保有資格のレベルをもとに算出。業種ごとに計算されます。
  • W(社会性等):社会保険の加入状況、建設機械の保有、防災協定の締結など。

ウェイトを見ると、X1とZがそれぞれ0.25と最も高く、次いでYが0.20となっています。「どこを改善するか」を考えるうえでは、この比重を意識することが出発点になります。なお、経審の制度全体の仕組みや申請手順については、経営事項審査(経審)とは?点数の仕組みと申請手順を行政書士が解説【横浜】もあわせてご覧ください。

完成工事高(X1)のコツ

X1は、P点の計算式においてウェイト0.25と最も高い項目のひとつでありながら、対策の余地が見落とされがちな領域です。

2年平均・3年平均の有利な方を選択する

X1の算定にあたっては、直前2年平均と直前3年平均のいずれか高い方を選択することができます。たとえば2年前に大型工事が集中していた場合は3年平均の方が高くなることがあり、逆に近年売上が伸びている会社は2年平均の方が有利なケースもあります。申請のたびに必ず両方を試算し、有利な方を選ぶことが基本です。この選択を意識せず申告してしまっているケースが実務では少なくありません。

業種の追加取得で工事高を適切に振り分ける

建設業の許可業種を追加取得することで、それまで「その他工事」として分類されていた完成工事高を、新たに取得した業種の完成工事高として計上できるようになるケースがあります。たとえば内装仕上工事業の許可を取得すると、従来リフォーム工事として計上していた売上を内装工事として計上でき、その業種のX1評点が改善します。入札で参加したい業種の評点を集中的に上げたい場合、業種追加は有効な手段のひとつです。

工事経歴書の計上漏れを防ぐ

完成工事高は工事経歴書(様式第2号)への記載内容がそのまま反映されます。実務上よくある計上ミスとして、JV(共同企業体)工事における出資比率に応じた金額の誤計上、工事の完成時期の期ズレによる計上漏れ、下請工事の出来高計上の誤りなどが挙げられます。決算前に工事台帳と照らし合わせて確認することが、失点を防ぐ確実な方法です。

Y点(経営状況)を構成する8指標と対策

Y点(経営状況分析)は、登録経営状況分析機関が以下の8指標をもとにスコアリングを行います。財務対策を打つ際には、どの指標が自社の弱点になっているかを把握することが重要です。

純支払利息比率は、支払利息から受取利息を差し引いた額の売上高に対する比率です。借入金の圧縮や金融機関との金利交渉によって改善できます。負債回転期間は、負債合計を月商で割った指標で、負債の削減と売上の維持・拡大が対策になります。売上高経常利益率は収益性の核心となる指標で、不採算工事の受注を避け、利益率の改善を意識した受注活動が求められます。総資本回転率は売上高を総資本で割ったもので、不要な資産や使っていない固定資産を圧縮することで改善できます。自己資本対固定資産比率自己資本比率は、いずれも自己資本の充実が共通の対策です。営業キャッシュフローは、利益が出ていても未収金が多ければ下がります。工事代金の早期回収や売掛金管理の徹底が有効です。利益剰余金は過去からの累積利益の大きさを示す指標で、毎期着実に黒字を積み上げていくことが長期的な改善につながります。

見落とされがちなW点(社会性)の加点項目

社会性等(W)には、防災協定・建設機械・ISO・若年女性技術者・社会保険のほかにも、取り組みやすい加点項目があります。

建設業退職金共済制度(建退共)への加入

建退共に加入し、証紙の購入実績があれば加点されます。従業員の福利厚生にもなる制度のため、未加入の場合は早めに対応することをお勧めします。手続きは比較的シンプルで、加入のハードルは低い部類に入ります。

法定外労働災害補償制度への加入

労働者災害補償保険(労災)の上乗せ補償として、民間保険や建設業関係の共済制度に加入していると加点になります。現場の安全管理の観点からも重要な項目であり、保険料は比較的安価なため、コストパフォーマンスの高い加点手段のひとつです。

CPD(継続的能力開発)への取り組み

技術系職員が土木学会などのCPD認定プログラムに取り組み、一定の単位数を満たしていると加点対象になります。研修・セミナーへの参加や技術的な自己研鑽が単位として認定されるため、日常的な人材育成活動と組み合わせて取り組むことができます。

Z点(技術力)のさらに細かい実務ポイント

複数業種にまたがる資格を活用する

技術士(建設部門)や一級建築士など一部の上位資格は、複数の業種においてZ点の算定に利用できます。1人の技術者が複数業種の評点に貢献できるため、該当する資格保有者が在籍している場合は、申請する全業種において漏れなく反映されているか確認しましょう。

技術者の常勤性と基準日を確認する

技術職員として計上するには「常勤性」の要件を満たす必要があり、社会保険の加入状況・給与の支払い状況などが確認されます。実態として常勤しているにもかかわらず、雇用形態の整備が追いついていない場合は早めに対応しておきましょう。また、Z点の算定基準日は決算日時点です。優秀な技術者の退職が見込まれる場合は、経審申請のスケジュールとの兼ね合いを事前に確認しておくことが大切です。

経審の申請スケジュールと入札参加資格の関係

有効期限を切らさないスケジュール管理

経審の結果には、審査基準日(決算日)から1年7ヶ月の有効期限があります。公共工事の入札参加資格を継続的に維持するためには、この有効期限が切れる前に新しい経審結果を取得しなければなりません。一般的なスケジュールの目安は次のとおりです。

決算終了 → 決算変更届の提出(決算日から4ヶ月以内)→ 経営状況分析申請 → 経審申請 → 審査結果の受領(申請から2〜3ヶ月程度)→ 入札参加資格の更新

決算から審査結果の受領まで最短でも5〜6ヶ月はかかります。「審査結果が間に合わず入札に参加できなかった」という事態を防ぐためにも、申請スケジュールを年間計画として管理しておくことが重要です。

P点と入札参加資格のランク区分

経審のP点を取得しても、それだけでは公共工事に参加できません。都道府県や市区町村、国の各発注機関に対して「入札参加資格申請」を別途行い、格付け(ランク)を取得する必要があります。格付けの基準は発注機関によって異なりますが、多くの場合、P点がランク区分(A・B・C・Dなど)の直接的な判断材料となります。「どの発注機関で何ランクを目指すか」という経営目標を設定し、そこから逆算して必要な評点水準を把握しておくことが、効率的な評点アップ戦略につながります。

建設業許可・経審・各種変更届のご相談は無料です

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この記事を書いた人

岩本隆一のアバター 岩本隆一 行政書士・税理士

税理士事務所として建設業の方々に関わる中で、許可関係も一緒にサポートした方がお客様にメリットがあると考え、行政書士事務所も開業しました。建設業許可・経審・入札参加資格申請など、建設業に関わる行政手続きを一括サポートします。(行政書士登録番号:20091970)

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